第7回テーマ 「人事の人は学生の何を見て採用・不採用を決めているのですか?」

山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと

『山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと』では、「働く」ことや「ビジネス」についてはじめて考えたはじめたGilrsUniversityの学生たちがもった素朴な疑問を、ビジネスのプロの山口豪志さんが答えます。

「仕事・働く」ということをもっと身近に感じれるような素敵なお話ばかり。

これを読んで、社会に出る前に知っておくべきことに関心を持っていただけたら幸いです。

 

第7回テーマ
「人事の人は、学生の何を見て採用・不採用を決めているのですか?」

 就活が始まると、選考において、多くの学生はES(エントリーシート)、面接、グループディスカッションを経験します。この一連の流れで、企業の人事の方は一体何をどのように判断して採用・不採用を決めているのでしょうか?また、中途採用と新卒採用の違いはあるのか?

 面接練習、SPIの問題練習やWebテストの勉強…これらの対策をする前に読んで欲しい!今回はそんな内容を満を持してお届けします!

 

 まず、中途で入る人材というのは、既に何かしらの仕事経験やキャリアがあります。例えば、前職でエンジニアとしてある仕組みを作った経験があれば、採用後も同じような開発ができることを期待されます。このように人事担当者はその中途転職者の経験や実績、キャリアを採用する役割に合うかどうかで採用・不採用の判断材料することができるのです。

 一方、新卒で入社する学生はどうでしょうか。東大出身の学生とほぼ無名の私立大出身の学生であれば多少なりとも差が出るかもしれませんが、20数年しか生きていない学生同士が学生時代に頑張ったことを面接で熱弁しても、人事側から見れば、どんぐりの背比べに過ぎません。

 だからこそ、人事側も採用・不採用の判断が難しいのです。

 では、どのように判断材料を集めているのでしょうか。

 答えは、「相対評価」をするための場を設けるのです。選考で学生に集団面接やグループディスカッションを課す理由は、学生一人ひとりを絶対評価して審査するにはスキルや特性から判断しにくいからです。選考者全員が同じESの設問に答えるのも、同じ単一の質問に対する回答で比較するため。このように、新卒採用における就活の仕組みは人事が評価・判断しやすいようにパッケージ化され、構築されているのです。これは会社側からすると都合が良いですが、就活生側からすると会社の仕組みに合わせて見比べられているだけであるということを認識しておきましょう。

 

今週の1問1答!

事業家の山口さんと女子大生のGUメンバーが一問一答形式で「働く」ことに関する疑問を解決!

【トピック】
■就活における自分の市場価値はどうやったら知ることができますか。
■社会人になる前にオススメの本を教えてください。
■お金を稼ぐという目的以外に、働くことを楽しむにはどうしたらいいですか。

 

■就活における自分の市場価値はどうやったら知ることができますか。

 新卒の学生に中途が求められているような市場価値はない、と思っていた方が良いでしょう。社会人になったらゼロベースからのスタートです。大学で習ったことを仕事(=価値)として生かせる分野は理系の研究職など限られた業種のみであり、学生時代のよほどの実績がない限りは、学生時代の実績は価値として認められません。

 そもそも、日本では「学生」と「社会人」で、それぞれ必要とされるスキルや評価される能力が全く別物であることを知っておきましょう。ちょっと難しいかもしれませんので、後ほど補足しますが、学生は、「アート」と「サイエンス」という学問を学び、その評価はプロセス重視。社会人は「デザイン」と「サイエンス」という業務を行い、その評価は結果重視になります。学生時代のルールや評価と、社会人のルールと評価は根本的に異なると思った方が良いです。

 このように学生と社会人、それぞれの時期において全く異なる環境であるため、学生の市場価値がゼロベースからスタートすることは当然のことなのです。

 

■社会人になる前に読書をはじめたいのですが、どんな本から読むのが良いかオススメを教えてください。

 まず、あなたの読書を始める目的を以下を参考に確認してみましょう。

 これを踏まえた上で、社会人になる前に読んでおきたい本を紹介します。社会人は早い答えの導き方が求められるので、後者の本を読むことが必要でしょう。以下におすすめの5つの本を紹介します。

 

①アルビントフラー「富の未来」上巻下巻
哲学と人間の本能が言語化された本。
山口さんは、バックパッカーをしてる時に繰り返し読んだそう。

②原丈人(はら じょうじ) 「増補 21世紀の新国富論
古典的な資本主義の転換点にある21世紀において、エッセンスであり希望が書かれている。

③堺屋太一 「日本を創った12人
歴史から学ぼうという姿勢で書かれた本。

④ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史上下合本版 文明の構造と人類の幸福
関連した分野でジャレド・ダイアモンドの執筆した本も同様におすすめ。

⑤佐藤雅彦・竹中平蔵 「経済ってそういうことだったのか会議
経済についてわかりやすく解説されている。

 

なぜ、この5つなのでしょうか。それは、5つとも別々のエッセンスだからです。
①:人類史・②:世界史・③:日本史・④:哲学・⑤:経済とカテゴリー別に網羅できます。

人類は、何から始まり何に向かうのか?、人間は何を価値だと考えるのか、日本人の精神的な成り立ちetc…これらについて、歴史を踏まえて多角的に学ぶことができるのです。

5つの分野(人類史・世界史・日本史・哲学・経済)はすべて教養です。

社会人になると、目の前のことをやるだけで忙殺されてしまいます。自分のスケーラビリティを広げるためには、そのための大きな土台がければ、積み重ねできる量が限られてしまいます。ですから、時間がある学生のうちに根本的な知識をインプットしておくことがオススメです。

(ちなみに、①で挙げたエモーショナルを強化するために、山口さんは読者ではなく映画を観に行くそうです。隙間時間で小説を読むと、感情が途切れ途切れになってしまいますが、時間が決まっている映画は、途中でストーリーが分断されることがないからだそうです。)

 

■大学生活が終わったら人生の夏休みが終わってしまう気がして社会人になりたいと思えません。お金を稼ぐという目的以外に、働くことを楽しむにはどうしたらいいですか。

 イソップ寓話に、3人のレンガ積み職人の話があります。

 レンガを積んでいる人に、「何をしているのか?」と尋ねると、ある人の回答は「仕事だからレンガ積みをしている」、ある人は「家族を養うお金を稼ぐために働いている」と答え、またある人は「世界平和を実現するのが夢で、そのために大聖堂を建てるからレンガを積んでいる」と答えました。レンガを積むというプロセスは同じでも、込める思いによって行動の姿勢が変わってきます。

 人はいずれ死にますし、人生は自己満足であることを踏まえてお話すると、働くことを楽しむ秘訣は、どんな世界を実現したいのか、生きる目的を探し続けることでしょう。

 理想を求め、目的を探し続けた者だけが偉業を成し遂げるのです。
 ただし、偉業を成し遂げる人生が良い悪い、というわけでもありません。人生は人それぞれですから。

 

オカネのホンネ(編集後記)

 今回は、就活を中心とした内容を記事にしました。今回のインタビューを経て、大学生活やインターンの経験から、何にストレスを感じるのか、アウトプットの質はどんな時に落ちるのか、自己嫌悪になるのか自分なりに考えました。その結果、①忙殺されている時、②義務感や暗黙の了解だけで盲目的に何かに取り組んだ時、③人間関係にとらわれ過ぎているとき、この3つだと気づきました。そして「すべての行動は手段である」という山口さんの教えから、「目の前のことは何かのパーツに過ぎない」ということを学びました。どんなことをしていても、ワクワクする瞬間、苦しい時、理不尽だと思う時、いろいろな場面に出会います。それでも、広い目で見れば、出来事のたった一部に傷ついてつまづいているだけであったり、一時的な感情に過ぎないのかもしれません。

 目の前のことに囚われている・熱中している時こそ、盲目的にならず、自分の理想や目的から逆算して、次のアクションを細分化して実行できる自分でいたいなと強く思いました。落ち込んだ時に特に大切なのは、慰めだけなく、課題解決のための判断と行動であることを心に留めておきたいです。

 私は大学生になって、損得勘定が他の人より下手だと感じる場面が多くありました。周りの人はみんな、本能で自分に有利になることを選べるんだろうなと思ったり、ネームバリューの持つ力に勝るものはないんだろうなって感じていました。でも、物事を客観的に比較しながら、目的と根拠を用いて思考を構築することで、自分の人生は自分のペースで進めることができるのだと気づきました。1年半のインターン活動や山口さんが教えてくださったビジネス的な思考によって、感覚的に選択する術しかなかった自分に、判断能力が強化され、選択に対する自信と覚悟が生まれたように思います。

 

今回のインタビューを経て、考え方が少し違うフェーズに移った気がしています!(笑)

自分よりも人生を長く生きている方、密度の濃い経験をした方からこうして学ぶ機会があることは本当に尊いことです。パスポートをもらった気分になります。記事を読んでくださる皆さんにも、学びや考えるきっかけを少しでも共有できていたら嬉しいです。少し長くなりましたが、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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