山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと
『山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと』では、「働く」ことや「ビジネス」についてはじめて考えたはじめたGilrsUniversityの学生たちがもった素朴な疑問を、ビジネスのプロの山口豪志さんが答えます。
「仕事・働く」ということをもっと身近に感じれるような素敵なお話ばかり。
これを読んで、社会に出る前に知っておくべきことに関心を持っていただけたら幸いです。
第10回「やりたいことを始めるベストタイミングとは?」
人生設計を考えるうえで、まず自分が経験したい仕事やライフイベントを想像しますよね。限りのある人生の中で、就職や転職、結婚・出産・育児など「What(何をするか)」に加えて、「When(いつするか)」も重要なキーワードです。そこで今回は、「やりたいことがぼんやり見えてきたけど、実行するタイミングのヒントを知りたい!」と考えている人や、「自分がどんなタイミングで行動に移せば良いのか考えたい」という質問に山口豪志さんがお答えします!
内的動機の”旬”
「思い立ったが吉日」という言葉があるように、やりたいことが見えた時に行動を起こす、これがベストタイミングです。
例えば学生の頃、宿題をやろうと思った矢先に親から「早く宿題終わらせなさい」と言われてテンションが下がった経験はありませんか?つい「今やろうと思ったのに~」と言い返したくなる場面ですね。
「これをやってみよう」「あれをやってみたい」という純粋な気持ちは、外的な要因よりも内的な動機付けに起因していると思いますので、その気持ちを大事にするのが良いでしょう。
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ただ、「やってみたい」と思うことや想像することは簡単でも、実行するのはハードルが高いですよね。年齢を重ねれば、結婚や出産・育児、親の介護などライフイベントと仕事が重なる場面も増えていきます。体力的にも10~20代の勢いが30代以降も続くわけではありません。何かを行動に移すチャンスは限られているからこそ、自らの”旬”を逃さないようにしたいですね。
そして、大人達はこうした事実を踏まえた上で、次世代に対して行動することの重要性を口酸っぱく伝え続けているのです。スタンフォード大学での学位授与式でスティーブジョブズが「Stay Hungry.Stay Foolish.(探し続けろ)」という言葉を卒業生に投げかけたのもその一例。「○○大学に行きたい」「オリンピックに出たい」「○○という職業に就きたい」など何かに対する意欲があること自体、かけがえのない価値なのです。裏を返せば、世の中の人すべてが強い想いを持っているわけではないからこそ、意志があって行動をする人が際立つのです。純粋な気持ちや行動に起因するモチベーションを大切にすることは非常に尊いことですね。
今週の1問1答!
事業家の山口さんと女子大生のGUメンバーが一問一答形式で「働く」ことに関する疑問を解決!
【今週のトピック】 □企業の2つの事業スタイル □ブラック企業はなくならない? □日本でのワークライフバランスについて
■自社サービスや商品をもっている会社の方が良いという話を聞きましたが、どういう意味でしょうか。
企業の事業スタイルには2つのパターンがあります。
価値提供が1社の企業で完結するかどうか、という基準で区別してみましょう。
①自社商品・サービスを持つ(主にメーカー)
基本的にメーカーは、生産者側が消費者へ伝えたい想いやユーザー体験を「モノ」を通じて届けることができます。自社製品や自社サービスを創ることで世の中を変えたり、メッセージを伝えられることが強みでしょう。
ただし、何もないゼロの状態からモノを作ることは非常に時間がかかります。ですから、製造途中の景気変動や時代変化にクイックに対応することが難しい、というデメリットも生じてしまいます。
②自社商品・サービスを持たない(主に代理業やコンサルティング)
この事業スタイルの特例は、広告代理店、人材紹介会社、コンサルティング会社です。これらの企業は、自社商材を持つわけではなく、企業・ヒト・モノの仲介することでマージン(手数料)を得たり、コンサルティングフィーをもらうビジネスモデルです。そのため、メーカーと違って製品やサービスに自社の意向を完全に反映できない、というデメリットがあります。一方で、製造から販売まですべての過程を担わないからこそ、利益率が高く、市況に敏感かつ柔軟な対応をしながら取引をすることができます。例えば、コンサルティング業務は課題のヒアリングからビジネスがスタート。売れない商品があれば新しい商品を提案したり、販促の改善策を提示することで価値を提供しています。
■どうしてブラック企業は無くならないのですか。日本人の気質の問題でしょうか。
小説家の小林多喜二が書いた『蟹工船』を読んだことはありますか?
おそらく、「ブラック企業」と呼ばれる環境で働いている当事者は、ブラック企業に勤めている自覚がある人ばかりではないと思います。外野から見ればブラックな働き方であっても、当事者は他に働く手段がない・その環境が当たり前だと思っていることも往々にしてあります。「ブラック企業」がなくなることはないでしょう。
また、日本人の気質にも起因していると考えられます。
例えば、戦国時代をイメージしてください。土地の狭い島国の日本は、土地のほとんどが誰かに所有されています。そのため敵陣に追い込まれた際、逃げ隠れする場所がありません。三国志の舞台である中国は、敵陣に追い込まれても最終的には、モンゴルなど陸続きの逃げ場があります。しかし、日本は島国であるがゆえに、武将は自身が所有する領土を侵略されれば、相手方の軍門に降るしかありません。また、日本は農民が兵隊として出陣していたため、兵隊が専門的な能力を持つ武士のみではなかったのです。ですから、忠誠心のない兵隊を率いながらも、武将は負けて土地を失うわけにはいかず、様々な制約条件が重なった状態で、武士としての役割を果たさなければならなかったのです。
同様に、現代のブラック企業の根本には、このような日本人の「視野の狭さ」という気質が影響しているのではないでしょうか。
■日本ではワークライフバランスが取りにくく生きづらいのでしょうか?
そもそも、日本は本当にすべての国民が生きづらさを感じていると思いますか?
確かに、他国と比べれば島国根性から同調圧力が強く自己主張しにくい国でしょう。しかし、仕事でキャパオーバーになったり、プライベートを優先したい場面であれば、自分の主張や事情を伝えるほかありません。
おそらく、どんな国に住んでいても生きづらさや働きやすさは一長一短です。実力主義のアメリカ、社会主義である北朝鮮、自殺率が日本よりも高い韓国…。日本も、多様性が認められにくいという課題や、コミュニティの小ささゆえに出る杭は打たれてしまうという弱点を抱えています。そのため、特定の人にとっては生きづらさを感じさせていることも事実です。
しかし、生きていくうえで必要な自己主張や防衛手段は自ら行動に起こすしかありません。ですから、一概に「日本だから生きづらい」「日本の働き方は間違っている」と言い切ることは難しいでしょう。
オカネのホンネ(編集後記)
今回は、やりたいことを始めるベストタイミングについて山口豪志さんにお聞きしました。「今でしょ!」という言葉が一時期流行しましたが、年齢を重ねるに連れて、やりたいことの数と同時に、やらなければいけないこと、やりたくないことも増えるように思います。大学受験の時は、自己満足・自己責任で受験勉強をしていましたが、大学生になってからは自分ひとりで完結することばかりではありませんでした。サークル活動からゼミ、そしてインターン活動は他者の力を借りて成り立つ事柄ばかりです。やりたいことをやってOKな場面ももちろんありますが、他人から頼まれることや予定の変更など、柔軟なやり繰りが求められる場面も多くあります。だからこそ、自分の不安定なモチベーションを過信しすぎず、即断即決を心掛けたいです。そして、即断即決をするためには自分の中に時間的・精神的ゆとりを持つことが私の自己トリセツです。つまり私は暇が好きです…。(小声)
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