第14回 「上場」とは何ですか?

山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと

『山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと』では、「働く」ことや「ビジネス」についてはじめて考えたはじめたGilrsUniversityの学生たちがもった素朴な疑問を、ビジネスのプロの山口豪志さんが答えます。

「仕事・働く」ということをもっと身近に感じられるような素敵なお話ばかり。

これを読んで、社会に出る前に知っておくべきことに関心を持っていただけたら幸いです。

第14回「上場」とは何ですか?

 「上場」は審査が厳しく、選ばれた企業にしかできません。しかしそれをすることで、資金調達の等の面で大きなメリットがあります。そのため、上場を目指している企業も少なくありません。一体、どんなメリットがあるのか、何が違うのか…。今回は、その「上場」について詳しくお話していただきました。

「上場」とは何をすること?

 山口さんは自身の著書でこう説明しています。これをすることによって何が変わるのでしょうか? 

 上場企業とは具体的に何かというと、例えば上場企業Aは自由に自分の名前のお金をすることができるんです。今月お金ないなと思ったら、A紙幣を刷って買いたい人に自由に買ってもらうことができる。つまり、資金調達です。

 不特定多数の人に株式を購入してもらえるので、大きな額を集めることが可能です。なので、自由度が高い企業運営ができます。これが上場の大きな魅力です。

 逆に、未上場企業は自ら株の購入者を探さなければならないので、身内や知っている人にしか売れません。

 

お金がかかる?

 上場準備と、上場を維持することの両方にお金がかかります。準備するお金が、監査法人や社内体制とかで大体2000~3000万。会社の規模が大きいとさらにかかります。

 例えば、1000人くらいいる会社だと派遣スタッフの労働環境や、セクハラ、残業代を払っているか、などの問題があったときに通報する窓口をちゃんと設置している必要があります。

 また、体制面、金銭面、労働環境などの最低水準をちゃんとクリアしているか、定期的にチェック、監査することも必要です。

 そして、それをしてくれる組織に対してお金を払わなければなりません。対象人数、社員数、取引先が多ければ多いほどコストはいっぱいかかるので、大企業で上場するとなれば何千万じゃきかず、何億円とかかります。

 3か月おきに四半期決算をし、取引先や、どこからお金が入っているのか等も細かくチェックされます。普通の一般の商店とか会社だとここまで細かくチェックはしません。

 このように上場企業は、自らお金を払って自分たちが嘘をついていないことや、正しく運営していることを証明しているので、安心して株の売買ができます。

 そして株を買った人は、値上がりした株の売却でもうけが出たり、会社の利益に応じて配当金をもらうことができたりします。

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【まめちしき】 株のはじまりは香辛料!?

 株の始まりは1600年ごろ、当時非常に高価だったコショウなんだとか。コショウはお肉を美味しく食べたい人に大人気で飛ぶように売れたそうです。当時お肉を美味しく食べられる人は富裕層ばかりで、高くても売れました。

 インドに行けば普通に安価で売っているコショウ。それを買いに行く船賃に1億の出資が集まって、それがさらに10倍とかの値段で売れる。そうすると売り上げが10億円にもなります。儲かったお金を、出資者に配当金としてお金を戻す。

 実は400年以上も前から、株の仕組みは始まっていたのです。

今回の1問1答!

事業家の山口さんと女子大生のGUメンバーが一問一答形式で「働く」ことに関する疑問を解決!

■資本金とは何ですか?
■起業家とはどんなことをして稼いでいるのですか?
■会社を色々な場所に展開するメリットとは何ですか?

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■資本金とは何ですか?

 資本金とは、事業を始めるときに用意できたお金の総額のことです。では、その準備金が1億円と1万円、どっちが信用できそうでしょうか?

 例えば、「1億円かかる仕事で1000万円は持ち出しでかかるけど、1か月遅れで払いたい」となったら、資本金が1億円の会社なら大丈夫そう、でも1万円の会社だとできないかもと心配になってしまいますよね。

  こういう点では、資本金が大きい会社の方が社会的信用度が高く、大きな商売に取り組みやすいでしょう。

  それだけの資金を集める能力があると思われるから、規模を示す目安と言えばそうです。しかし、会社の規模になんとなく比例して見せられる一方で、資本金は1億円です、と言ってそれをすぐに使っても文句言われないので、ある意味見せ金のようなものです。

 大企業と中小企業を分ける意味合いでも使われます。あとは、300万円以上で有限会社、1千万円以上で株式会社が作れた頃の名残でもあります。現在は有限会社は作れず、株式会社は1円から作れます。

■起業家とはどんなことをして稼いでいるのですか?

 起業家って、人間と同じくらい意味が広くて、「自分で事業を始めた人」みたいな意味ですね。デザイナーで起業しているならデザイナーをしている人だろうし、営業で起業している人は営業代行とかの仕事をしているだろうし。自分の強みとか特技を生かしてお金を稼いでいる人たちです。

 企業を立ち上げて、その会社の代表をしている人が多いです。1社の人も複数の人もいますが、事業領域や目的に応じて会社を作ったりしているので、複数の方が多いです。

 “定款”っていうので、その会社が何の目的でどういうところに存在する会社かが決まっています。定款に広告代理店と書いてある会社が保険を扱ったり、保険の代理店したりするとだめなんです。書き換えなきゃいけない。書き換えて、事業を広げることもできるけど、いっそ社名や目的を変えた会社を作る方が素直です。

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■会社を色々な場所に展開するメリットとは何ですか?

 例えば東京でやっている会社が、九州でも仕事をすることになった。たくさん仕事をするようになると、明日も来てよとか、次の打ち合わせは~、とかそこにいなければいけなくなります。そうすると支社ができます。

 お客さんとの物理的距離や、コミュニケーションの頻度を高めるために支社を用意します。利便性が向上して、対応が早くできるようになります。そういう意味では合理的ですね。

 でも増やすほど、その地域で納税もしなきゃいけなくなります。なので出しまくればいいわけではありません。その辺のバランスは重要ですね。

 上場している企業だとすると、売り上げは支社も含めてトータルで決算します。でも、子会社だと切り分けての決算になることもあります。

 例えば輸出入も支社が担当するとなると、商売が複数の形になり管理コストも上がるし、審査や在庫確認などの手間が増えてしまいます。その場合輸出入だけをする、親会社との取引の関係でお金をもらう子会社ができ、それを一個の会社として管理することができます。

 会社を変えると利益構造が変わることもあります。だから、同じ事業をする支社を増やして横展開するか、違う事業をする子会社として展開するかは一度議論されるべきことですね。

アンドウのホンネ(編集後記)

 最近、山口さんの著書「0 to 100 会社を育てる戦略地図」を読んで、会社にも成長段階があるんだと初めて知りました。今回お話していただいた上場は、その成長段階の一番高いところにありました。株式を公開することがこんなに大変なことだとは知らず、上場している大企業っていうのは私が想像するよりはるかに大規模なのだと分かりました。そこでは莫大なお金が動いているのですね…。

 株の始まりがまさかコショウだったとは意外でした!しかもその仕組みが今や世界中に広まって世界規模で取引されているなんて、先人たちは思いもしなかったでしょう。

 いつか私も勉強して株を買ってお金を稼いでみたいなぁ、と思っていますが、それができるのは果たして何年後になるのでしょうか。

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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

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