山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと
『山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと』では、「働く」ことや「ビジネス」についてはじめて考えたはじめたGilrsUniversityの学生たちがもった素朴な疑問を、ビジネスのプロの山口豪志さんが答えます。
「仕事・働く」ということをもっと身近に感じられるような素敵なお話ばかり。
これを読んで、社会に出る前に知っておくべきことに関心を持っていただけたら幸いです。
第13回「”ビジネス”とは何ですか?」
普段の生活の中で”ビジネス”という言葉を耳にする機会は結構あるのではないかと思います。でも、この言葉の意味を説明できるでしょうか?
なんとなく使っていて、実際に会社で働いてみないとどこか縁遠いような気がするこの言葉。実は私たちが毎日使う”お金”と大きく関係していて、身近なところにたくさん存在するものなのです。
お金の3つの機能
ビジネスと、お金ができた理由はリンクしています。なので、まずはお金の3つの機能(ファンクション)を知りましょう。
何だと思いますか?
例えば、自分は漁師で魚を獲って生活している。でもそれを料理するには塩が必要で、食べるときにわさびが欲しい。そのとき何をする必要があるでしょうか。
人からもらう必要がありますね。でもただではもらえない。なのでお金を使って「交換」します。これが1つ目の機能です。
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でも、魚ってすぐ交換しないと放置していれば2,3日でいたんでしまいます。干しても長く持ちません。そこでその魚を1000円と交換したとします。すると、そのときもらったお金の価値はどうなるでしょう?
ずっと1000円のまま変わりませんね。魚の価値は下がっていくけど、お金の価値は変わらない。 つまり「価値を保存」することになります。これが2つ目の機能です。
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最後、3つめは何だと思いますか?
例えば、あなたが魚を買う側だったとします。 一匹1,000円の魚と、一匹3,000円の魚、希少な魚ってどっちでしょうか。
3,000円の魚ですよね。
このときにしたのが「比較」です。これが3つめの機能です。どちらの方が希少なのか、価値があるのか。同じお金は誰が持っていても同価値なものだからこそ、比較することが可能なのです。
例えば某ゲームの中で使われる通貨、100ベルと100ポケドル、同じ価値でしょうか? それぞれ違う価値なので比べられませんね。
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ここで話を戻しましょう。つまるところ、ビジネスとは経済なのです。
自分はお魚を獲っています。食べるために塩やわさびが欲しいです。 でも、塩とかわさびを作っている人と、お魚を交換してくださいと言っても、もし彼らが魚をいっぱい持っていたらもう必要ありません。
早めに価値を交換しないと傷んでしまうので、お金と交換してくれる人と交換したい。この、お金に交換してくれる人との間に発生するのがビジネス、すなわち経済です。
この3つの機能によって、お金は人々の生活の中で潤滑油のような役割を果たしており、流通させるのに必要なものになっています。
だから、お金が持つこの3つの機能が非常に重要なのです。
今回の1問1答!
事業家の山口さんと女子大生のGUメンバーが一問一答形式で「働く」ことに関する疑問を解決!
【今回のトピック】
■会社が経済を回す仕組みや、社会経済などについて知りたいのですが何から手を付ければよいのでしょうか?おすすめの本等はありますか?
■大企業って本当に安定しているのでしょうか?
■地方と都市の賃金格差はどうしてうまれるのでしょうか?
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■会社が経済を回す仕組みや、社会経済などについて知りたいのですが何から手を付ければよいのでしょうか?おすすめの本等はありますか?
「経済ってそういうことだったのか会議」という本が非常に分かりやすいです。今回のようなお金の話やその機能について、シンプルに書いてあります。
あとは例えば、単純な比較でもいいんです。
家庭教師のアルバイトの時給は2000円もするのに、居酒屋の時給が1000円なのはどうしてだろう、とか。日々の生活の中でのちょっとした違いとか変化に気づくっていうのも面白い。そういうことから経済の仕組みを理解するっていうのも手だと思います。
ただ、ネットで調べるのは7割くらいの周辺情報を集めるのには向いていますが、誰が担保しているわけでもないし、意図があって載っている情報なので、デマや過大に表現されたものも多くあります。嘘半分と思って過信しない方が良いです。
本は情報を正しく使えるための物、正しく載っているはずであろうという前提で読むものなので、本を読むと良いでしょう。
あとは、諸先輩に聞いてみて知識を補完することができればさらに良いですね。専門の知識がある人とかに聞いてみて、ネットで得た7割くらいの情報を10割にする。そんな風に学んでいくのも面白いです。
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■大企業って本当に安定しているのでしょうか?
安定している状態って何でしょうか?
例えば、会社のメンバーが1,2人だったら、インフルエンザで片方倒れてしまったとき休まなきゃいけなくなる。でも1000人の会社なら100人休んでも900人いる。毎日営業できるっていう意味で安定ならば、人数が多い方が当然担保できます。
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ほかに、支払い能力という視点もあります。社員が数人で資本金が1000万円の会社が、食中毒を引き起こしてしまった。そんな場合、賠償金で1億円必要だとしても払うことは難しいでしょう。 でも、大きいグループ会社で資本金も売り上げもある会社だったら、賠償金1億円でも払うことができる。
人の数、お金の規模の大きさなどによって、受ける影響から自社を守れるかどうか変わってきます。この場合、どちらの規模も大きい方がこの点ではより安定していると言えるでしょう。
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一方で、商売の規模を大きくするとミスした時の影響の範囲も広くなるし、ペナルティも大きくなります。例えば賠償金が2兆円必要になったりするかもしれません。そんな額を払える会社はなかなかありません。
規模が大きいというのは同時にリスクも大きく、だめになるのも早いのです。
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社員が3人で年収が1人年500万なら年間1500万、500人で年収1000万なら5億円必要です。売り上げがなくなったら、少人数ならまだ何とかなるかもしれませんが、大人数だと担保できず潰れてしまいます。そういう意味では、規模の大きい会社は大変です。
大企業はリスクがある。有名な会社だと、社会的責任も大きいです。 だからより保守的にならなければなりません。そのため、若い人にはチャンスがなく、40,50代にならないと自主的に動けなかったりするのです。
“安定”を考えるには様々な視点があります。 どんな安定を求めるか、ですね。
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■地方と都市の賃金格差はどうして生まれるのでしょうか?
地方と都市の賃金格差は、地価が主要な差になっており、そこからかかるコストが物販に影響し、結果として賃金にも反映されています。
例えばアメリカのサンフランシスコでは、年収1000万円では生活保護の家庭になります。なぜなら、家賃がワンルームでも30万円前後するため、家賃だけで年間360万円以上かかるからです。
逆説的になりますが、賃金である給与が高いために都市に人は集まりますが、その高い賃金に見合う仕事や事業を行わないと都市でのビジネスは成立しません。都市では、法人も個人も収支が大きくなり大きな売り上げや利益が上がっても、この分の支出も大きくなってしまうのです。
アンドウのホンネ(編集後記)
今回は、ビジネスそのものについてお話していただきました。“ビジネス”って言葉をなんとなくで使ってしまっていたので、「あれ、ビジネスってよく口にするけど一体何?」という初歩的な疑問がここにきて浮かびました。今までは、“ビジネスマン“という単語からか、たんに働くことを指す言葉だと思っていました…。
でも今回のお話を聞いて、「ビジネスってある一つの行動を表すんじゃなくて、人と人との間に生まれる経済のことを言っていて、またそこの経済の裏には社会の仕組みが隠れている、奥の深い言葉なんだなぁ。」なんて思いました。ようやく”ビジネス”という言葉の本質に触れられたような気がします。
実はこの記事を書き始めるまで経済とか社会の仕組みとか、複雑そうで全然興味がなかったんです。でもこうして学んでいると、身の回りの疑問が解決されたり、知識と知識が繋がったりしてきて面白く、興味がわいてきています。経済とかビジネスってただの機械的なものだと思っていましたが、実は真逆で、人と人とのつながりそのものだったんですね。この面白さに高校生くらいで気が付きたかったです(泣)。
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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