山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと
『山口さんに聞いた「お金」と「働く」こと』では、「働く」ことや「ビジネス」についてはじめて考えたはじめたGilrsUniversityの学生たちがもった素朴な疑問を、ビジネスのプロの山口豪志さんが答えます。
「仕事・働く」ということをもっと身近に感じれるような素敵なお話ばかり。
これを読んで、社会に出る前に知っておくべきことに関心を持っていただけたら幸いです。
第6回テーマ 「成長するマーケットの見分け方を教えてください!」
今回は、成長するマーケットの基準や見分け方についてお聞きしました!就職後にサービスを企画・展開するにあたり、的確にニーズを読み取り、的確に利益に繋げる活動ができたら大人としてかっこよくないですか!?これから就職する学生や就活中の学生が、マクロな視点で社会や経済を捉えられるような内容を聞いてみました!ぜひご覧ください!
成長するマーケットの見分け方ー⑴人口動態の変化
そもそもビジネスには、課題発見型と理想追求型の2つのタイプがあります。課題発見型とは、ある問題(社会課題や日常生活での不便)を解決するためにサービスや商品を生み出すタイプ。理想追求型とは、ある理想(幻想的な空間やエンターテイメント、ゲーム、新しい技術を活用したなど)を体現するためにサービスや商品をつくるタイプです。
今回は、特に課題発見型のビジネスに注目して考えてみましょう。例えば、現在の日本は、人口減少が続き、さらに団塊の世代が後期高齢者となることから、社会保障費の急増が懸念されている、2025年問題を抱えています。そこで普及してきているのが、少子高齢化を背景としたお葬式のWEBサービスや若者の晩婚化に対応した出会いマッチングアプリです。人口動態の変化によって、新たな社会課題が発生し、特定領域が市場としてニーズが高まるっているのです。
逆に人口が増加に転ずれば、食料供給やエネルギー問題などに関わる市場が成長していくでしょう。
成長するマーケットの見分け方ー⑵PEST分析
人口動態の変化から分析する他に、PEST分析という手法があります。
PEST分析によって、社会現象を4つの要因Politics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)から分析し、成長するマーケットを見極めたり事業戦略を企画するのです。(参考資料:PEST分析とは Mission Driven Brand ブランディングの解体新書より)
PEST分析を用いれば、東日本大震災のあとに省エネ家電が売れたり、メッセージアプリの安否確認のための既読機能が普及したのも、必然だったのかもしれません。
ただし、現実問題としてはフェイクがあるものです。後日談的に後から分析すると実際にはこうだった、ということも少なくありません。市場を分析する際には、近視的に見る虫の目と、俯瞰して全体をみる鳥の目、どちらもが必要になります。
また、どこの経済圏をターゲットにするかによって、消費動向が異なることも忘れてはなりません。地域とそのエリアの年齢分布、関東・関西、都市部・地方、国内・海外…などといった様々な市場を軸にしたバランス感覚も必要です。
【発展編】成長するマーケットの見分け方ー発散と収束
これまで説明した成長マーケットの見極め方の他にも、「発散」と「収束」の2軸で特定の産業分野が振れている、という考え方です。
例えば、衣食住は人々の生活においてなくなることがない産業分野です。必ず流行りと廃りがあります。例えば、衣類アパレル業界で考えると、90年代は様々な高級ブランドを中心に色々なファッションブランドが多種多様でありましたが、現在はユニクロやH&Mをはじめとするファストファッションが主流ですね。つまり、「収束」する状態に変化しています。
また、食の分野はどうでしょうか。ポテトチップスを例にすると、少し前までは大手のカルビーや湖池屋などの様々なナショナルブランド商品が市場を占めていましたが、今では小売流通のプラおベートブランドの商品が増えています。また、インターネット通販の普及によりポテトチップスの種類も多種多様に「発散」する状態に変化しています。
さらに、料理レシピ情報でも同様の動きがあります。以前はテレビや雑誌、新聞にのみレシピ情報が集約されており、情報発信する人も著名なプロの料理人や料理研究家に限られていました。しかしクックパッドの登場により、主婦をはじめとする一般層もレシピの発信が可能となりました。現在では、SNSの普及に伴い再度、デリッシュキッチンやクラシルのような編集権を自社に集約した形の旧来の「収束」したモデルが台頭して来ています。
このように、商品の種類や選択肢が増える”発散”、メリットとしてはいろんなものが試せる・楽しめる、逆にデメリットは選ぶのが煩雑になる・分かりにくい、と言う状態。
一方で、種類が制限されて一定の品質が担保された”収束”に移り変わっていく。このメリットとデメリットは物事の表裏を意味するので、常にどちらが良いと言うよりも、その間に揺れる状態になる、ということです。
こうして繰り返される市場の法則性は、マクロな視点でメカニズムを捉えることで、原理原則を見極めることができるのですね。
今週の1問1答!
事業家の山口さんと女子大生のGUメンバーが一問一答形式で「働く」ことに関する疑問を解決!
■低いリスクの資金調達方法を教えてください。 ■日本人はなぜ税金に関心が低いの? ■日本はインフラや娯楽まで多岐にわたりサービスや商品が溢れ、 大抵のニーズが満たされ市場が飽和状態だと思います。これ以上日本で ビジネスをするよりも、海外でビジネスをする方が未来があるのではないですか?
■低いリスクの資金調達方法を教えてください。
リスクの捉え方にもよりますが、【借りたお金を返せなくなること】がリスクだと設定して考えてみましょう。資金調達するにあたり、比較的融通が利きやすく、寛容な対応をしてくれる人が望ましいですよね。
起業家の世界では、資金調達は4Fから始めろ、という「4F」という考え方があります。
●Founder(創業者自身) ●Family(家族) ●Friend(友達) ●Foolish(バカ:エンジェル投資家*)
はじめから銀行や株式市場から資金調達すると、4Fに比べて信頼関係を築くまでの手間や返済のリスクがかかります。ですから、リスクを抑えて資金調達を始めるならば4Fを基準に考えてみるのが良いでしょう。
上場企業の経営者であれば資金調達の方法として「銀行の金利が低ければ銀行から。銀行の金利が高ければ株式市場から。」と考えているそうです。2018年年末から年始にかけては日本株価が暴落しましたね。その前に株式市場で資金調達をしておくのが、クレバーな上場企業経営者の手腕でしょう。このように、市場の景気をいち早く読み取りながら経営戦略を練ることで、ローリスクでの資金調達が可能なのです。
*エンジェル投資家=創業して間もない企業に出資する投資家。より詳しく知りたい方は、山口豪志さんのブログをご参考ください!
■日本人はなぜ税金に関心が低いの?
サラリーマンが多いからでしょうね。多くの場合、サラリーマンがもらう給料は、税金があらかじめ差し引かれています。そのため、自分で税金を支払っている、という感覚や習慣がないのです。そのため、青色申告・白色申告など個人で納税している方に比べると税金のあらゆる知識が必要とされないので、結果として税金の使われ方にも関心が低くなってしまうのでしょう。
■日本はインフラや娯楽まで多岐にわたりサービスや商品が溢れ、大抵のニーズが満たされ市場が飽和状態だと思います。
これ以上日本でビジネスをするよりも、海外でビジネスをする方が未来があるのではないですか?
そうですね、海外が好きな人、海外で働くことに違和感がない人にとっては海外での仕事をする方が未来は明るいかもしれません。
近代日本の経済を歴史的に振り返ってみましょう。
第二次世界大戦後の日本は焼け野原で、商社をはじめとして国家全体に「渇望感」で溢れていました。戦後復興を目指して何かしらの経済活動をやらざるをえない状況であり、皆が日々のやり甲斐であり使命感もあった時代です。
しかし、先人の方々の頑張りで豊かになった今の日本は、ありがたいことにそのような状況とは全然違いますね。
また、奇しくも日本は現状では信用がある国ですから、新たに海外市場へリスクを背負って参入するも必要ないのです。ですから、海外でビジネスする日本人の絶対数は多くはないでしょうね。
商売には、まず信用・信頼が必要。例えば千葉県出身の私が突然インドに行ってお店を開いてすぐに大きな商いができるかというと…そう簡単なことではありませんよね(笑)。国内であれ海外であれ、その土地の特性や人々のニーズを理解してビジネスをしないと成功確率は低いですよね。
オカネのホンネ(編集後記)
今回は、成長するマーケットの見極め方を中心にお聞きしました!人口動態の変化、社会現象、収束と発散の法則など、多様な軸で経済活動のダイナミズムを読み解いてみましたが、いかがでしたか。トレンドに乗る側よりも、トレンドを作る側で前のめりに生きたい、と思っている私はとても興味深い内容でした!時代の流れすべてがこのような型にはまることは無いと思いますが、市場のニーズを確実に把握し、事業戦略における適当な判断を下すために、マクロな視点も非常に大切なんだと気づかされました。
また、今回は課題発見型のビジネスを中心にした内容でしたが、これらは理想追求型のビジネスにおいても生かすことができると思います。対価をもらうということは、誰かのニーズを満たす必要がありますから、市場を見極める視点を活用できる!と感じました。むしろ、理想追求型のビジネスにおいては、独りよがりにならないサービスや商品を生み出すために、非常に大切な知識かもしれませんね。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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